鬼子母神のご尊像は、室町時代の永禄4 (1561)年の5月16日、雑司の役にあった柳下若狭守の家臣、山本丹右衛門が清土(現在の文京区目白台)の地中から掘りだし、清土鬼子母神 〈別称、お六鬼子母神〉境内にある三角の井戸でお像を清め、東陽坊(後、大行院と改称、その後、法明寺に合併)に預けた。
ところが、 東陽坊の一僧侶が、 その霊験顕著なことを知って、密かに ご尊像を自身の故郷に持ち帰った ところ、たちまち病気になってしまう。この僧侶は「像」に何か特別な不思議な力でも感じたのだろうか。 再び東陽坊に戻されることとなる。 天正6 (1578)年 「稲荷の森」 と呼ばれていた地を切り開いて堂宇を建て、 東陽坊にあった鬼子母神像を還すのである。
江戸法華の流行とともに、 鬼子母神像がもたらす霊験の噂は急激に広まり、人々の鬼子母神像に対する畏敬の念から崇高なものに対する信仰はますます盛んとなっていく。
▲ 「江戸名所図会」鬼子母神出現所。鬱蒼とした感じが伝わる。 今は暗渠になっているがかつては弦巻川が流れていた。
郷土史かるたから歴史を読み解く
さて、豊島区の郷土史の一端が わかる絵本「雑司が谷 いろはかるた」(雑司が谷ルネサンスの会 2005年発行)がある。 郷土の歴史を子どもから大人まで親しみやすく楽しめる全9４枚のかるたである。
「ほ」
星跡の畑で発見 鬼子母神像
清土の星跡と呼ばれていた畑で発見されたとある。
「の」
能登の前田利家は大行院を建てた人
法明寺地内に建てた寺が大行院(東陽坊)である。建物は、前田利家によって寄進されたといわれる。
「と」
利家の孫娘が建てた鬼子母神堂
鬼子母神堂は、 その後、寛文4 (1664) 年、前田利家の孫娘(前田利常の三女満姫)により本堂が建てられた。
＊次号では前田利家と孫娘である満姫と鬼子母神像との関わりをより深掘りをしていく。
取材協力：豊島区立郷土資料館
（『豊島の選択』より加筆転載）
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