先月号で、本家の要斎が興し た陶磁器・竹本焼についてふれた。要斎から息子の隼太へと継がれていく。生まれながらにして英才聡明で5歳の時に将軍家茂に文久二年三月に謁し、その人材を認められるほどであったという。慶応元年将軍長州征伐に従い大坂に滞陣中に楽焼の魅力に憑かれ、このことが後年世界的な美術陶器として海外へ 名声を広める原動力となる。 大政奉還そして明治維新と なり父と共に鬼子母神付近へ隠 棲するやむなきに至り、陶器 づくりの手始めに盆栽の鉢を焼 く。嘗ての松尾芭蕉の師である北村季吟の別荘に山の井(増山の井)と呼ばれる名井を知り移り住む。高田1丁目の坂(日無坂)の途中西側あたりで、明治6年、ここに含翠園を再興した隼太は西欧の技術を積極的に導入する。
フランス式直立円 窯を築き石膏型による鋳込成 形法を習得する。辰砂(赤色) や蕎麦釉など釉薬の開発にも力を注ぐ。その後国内外の博覧会で高い評価をえる。陶器大辞典には「我が国に於ける蕎 麦釉は竹本隼太をもって最初とす」と記されている。
明治9年にはパリにおける万 国博覧会には玳玻釉(たいひゆう)の大花瓶を出品、これが名誉賞を得て竹本焼の名声が世界的になった。 明治25年、シカゴの大博覧会に出品する花瓶を予定より早く窯出しをしたが、 その翌年明治25年11月45歳で 生涯を閉じ、その後、息子の皐一が後を継ぐこととなる。現在、上野の東京国立博物館に数点 が所蔵されているが、「豊島の土」を国際的な美術品として海外へ送り出した隼太の功績は大きい。
 | 非常に神経質であり、窯入れの日は妻 は子ども達に静かにしていなければな らないと諭したという。一方、窯出しの 前日は子どものように上機嫌という無 邪気な一面もあった。経営面でも才が あり生糸の生産に欠かせない製糸機 械部品、女性の結髪に用いる笄部品 なども生産した。 (『豊島史友』(社会教育資料17集) 昭和30年より) ▲タイルに焼き付けた34〜5歳の頃竹本隼太 |
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竹本隼太 作
紫薇釉紅葉文丸形花瓶 （しびゆうもみじもんまるがたかびん） 高18.4 口径4.9 胴径18.7
美術展覧会（明治24年 1891）銀牌受賞
▲東京芸術大学大学美術館蔵
取材協力：豊島区立郷土資料館 （『豊島の選択』より加筆転載）
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