竹本焼は明治初年から大正 期にかけて、徳川幕府の旗本で あった竹本家の要斎が興し、息 子の隼太、孫の皐一へとわたり作 られた陶磁器のことである。
明治維新後、要斎は、高田豊川町(現高田1丁目文京 区日無坂の西側一帯の4000 坪)に屋敷を構え、敷地内に登り窯を築き含翠園と称して 窯業経営を始める。
焼き物に必要な水は敷地内 に湧き出る清水を利用。陶土 は瀬戸などから取り寄せたほ か、地元雑司ヶ谷や落合の粘土 も使用していたようだ。
含翠園が位置する北豊島郡 高田村は良質の陶土の産地であ り、竹本焼はまさしく豊島区の水と土から生まれた焼き物といえる。
瀬戸の陶工を雇い欧米輸出品 として薩摩焼風の彩色花瓶や、 煉瓦や土管といった洋風建築用 の建材などを製造するが、士族 の商法、ゆえに採算とれず、経 営は息詰まる。更に追い打ちをかけるがごとく明治6年に火災 で工場は全焼、一時廃業するこ ととなる。
※次号では息子の隼太、そし て孫の皐一に受け継がれていく 竹本焼にふれる。
▲「東京府武蔵国北豊島郡高田村近傍」(部分)
○印が含翠園の窯場で南側(下方)に神田川が流れ る。現在は住宅地になっているため場所を特定するこ とは難しいが高田1丁目23、33番あたりか。急斜面な ど地形は当時と大きく変わっていないと思われる。
▲石膏型製陶図 (竹本要斎「本邦石膏模型製法 ノ濫鶴」「澳国博覧会参同記要』 下篇)
要斎の活動で注目されるのは石膏型 を用いて陶磁器を製造する石膏型鋳 込成形法の導入を含翠園で試みたこ とである。これは複雑な器形でも均質 の厚みをもった同形素地ができる。
【出典】横山恵美「竹本要斎と「含翠園」 の創業について」 『豊島区立郷土資料館 年報』第12号、1998年
取材協力：豊島区立郷土資料館 （『豊島の選択』より加筆転載）
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