��.静炎お嶋
��-4.後記
12年後、夫の廓清が歿した(1719年)。その日は、奇しくもお七の命日の3月29日であった。その奇縁にお嶋は驚愕したが、お嶋も7年後に亡くなった(1726年)。
そして1772年のことだった。西運が通った行人坂から火が出て、折からの強風により、たちまち白金から神田、湯島、下谷、浅草までを焼き尽くす大火となった。
お七を知る人たちの中には、お七と左門(西運)が地獄で落ち遭い、またぞろ恋の炎が燃えたのだという者もいた。
菓子屋の「真志屋」は幕末まで続いたが、度重なる火事でついに再建の見通しが立たず、水戸家御用達の権利は菓子屋「金沢丹後」へと譲渡された。
お嶋が祐天上人に依頼した「六字名号」は、お七の袱紗に包まれたまま、「真志屋」の家宝として伝えられていた。それを森鴎外が確認し、『寿阿弥の手紙』という小説にした。
〔完〕
参考資料：『於大の方と傳通院』(無量山傳通院刊)、「澤蔵司稲荷と稲荷蕎麦の由来」(慈眼院澤蔵司稲荷)、赤松宗旦『利根川図志』(岩波文庫)、柳宗悦『南無阿弥陀仏』(岩波文庫)、小石川仏教会編『小石川の寺院』(西田書店)、森鴎外『寿阿弥の手紙』(ちくま文庫)、
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