コラム(江戸魂千夜一話)

青山富有柿プロフィール
かわら版指南。趣味は読書と散歩。好きな食べ物はお蕎麦。
江戸東京下町文化研究会会員。

江戸魂千夜一話概説
 江戸時代の庶民生活には何かとてもいい雰囲気があったような気がしています。そこには生活のためのいろんな知恵がつまっていたのではないかと思います。時代の変遷を繰り返すうちに、そのよさがだんだんと失われつつあるとはよく言われることですが、探せばまだまだたくさんあると思っています。 
  このエッセイでは、江戸のよさを感じさせてくれるような、おもしろいエピソードをたくさん探し出してきて、簡潔にわかりやすく紹介していきたいと思っています。

►CONTENTS
第一話「寄席は健康にいい」
第二話「ボーイズバラエティ協会」
第三話「酉の市(とりのいち)」
第四話「江戸っ子気質(かたぎ)」
第五話 「野暮(やぼ)はだめ」
第六話「天ぬき」
第七話「負けずぎらい」
第八話「寄席で地震」
第九話「落語をやらない落語家」
第十話「ほおずき市」
第十一話「隅田川花火大会」
最終話「江戸時代のこどもたち」
第二話「ボーイズバラエティ協会」

寄席は毎月十日ごとに出演者と演目が入れ替わる。上席(かみせき1〜10日)中席(なかせき11〜20日)下席(しもせき21〜30日)という。31日まである月は1日余ってしまう。この日はどうしているのか。
実は「余一会」と呼ばれる特別興業が行われている。
寄席通の江戸っ子によれば、なかでも新宿末廣亭で開催されているボーイズバラエティ協会主催の余一会が面白いらしい。
名称は「ボーイズバラエティ寄席」「ボーイズバラエティ大会」「ボーイズバラエティ大行進」と毎回微妙に変わるのだが、何れもボーイズバラエティ協会の精鋭が結集して日頃の腕を競い合う、寄席版運動会のような催しらしい。毎回開場前から行列ができるほどの大盛況のようだ。
 ところでボーイズとは何か。
ウィキペディアによれば「ボーイズとは、演芸の一種で、楽器を使用した音楽ショウ。漫才師の行う音曲漫才や、コミックバンドが演ずる音楽コントとは異なる、独特の形態を持つ〜中略〜1937年に浅草公園六区の浅草花月劇場(吉本興業直営)における演目「吉本ショウ」で、あきれたぼういず(東京吉本所属)が行ったのが端緒である。この伝統を受け継ぎ「ボーイズ」の名は主に東京芸界で用いられる」とある。あきれたぼういずから今年で85年、その歴史は古い。
残念ながら時代の流れには抗せず現役のボーイズはめっきり減ってしまった。ボーイズバラエティ協会の会員も今ではコント、漫才、漫談、ものまね、マジック、ジャグリング、紙きり、つがる三味線、歌手など多士済々だ。(下記ホームページをご参照ください)。
 31日に話をもどすと、当日の観客席はほとんど関係者で埋め尽くされるらしい。関係者と言っても、要するに家族だったり、出演者行きつけのスナックのママさんだったり。お目当ての芸人さんが出てくると、拍手喝さい大笑いの連続で、大いに盛り上がるのだそうだ。
先の江戸っ子によれば、大笑いに含まれた「がんばれ」が個々の芸人さんの人生ドラマを感じさせ、ほろっとするらしい。
そこには笑いだけではないペーソスがある。
江戸の魂はここにもあった。


*ボーイズバラエティ協会 http://bo-vara.com/



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