コラム(江戸魂千夜一話)

青山富有柿プロフィール
かわら版指南。趣味は読書と散歩。好きな食べ物はお蕎麦。
江戸東京下町文化研究会会員。

江戸魂千夜一話概説
 江戸時代の庶民生活には何かとてもいい雰囲気があったような気がしています。そこには生活のためのいろんな知恵がつまっていたのではないかと思います。時代の変遷を繰り返すうちに、そのよさがだんだんと失われつつあるとはよく言われることですが、探せばまだまだたくさんあると思っています。 
  このエッセイでは、江戸のよさを感じさせてくれるような、おもしろいエピソードをたくさん探し出してきて、簡潔にわかりやすく紹介していきたいと思っています。

第十一話「隅田川花火大会」
 江戸っ子は花火好きである。
今夏には7月に7回、8月に14回の計21回の花火大会が東京で開催される予定だ。
http://hanabi.walkerplus.com/list/ar0313/
 東京の花火大会は今から281年前の「両国川開きの花火」から始まった。
 享保17 年(1732 年)、飢饉と疫病で多くの犠牲者が出たため、八代将軍徳川吉宗は慰霊と悪疫退散を願って、両国川開きの日に水神祭(すいじんさい)と川施餓鬼(かわせがき 死者慰霊の法会)を行った。そして翌年の川開きには宗教行事だけではなく、慰霊のために花火を20発ほど打ち上げた。これが現在の花火大会のルーツと言われている。
 「両国川開きの花火」は途中、明治維新や戦争で中断を余儀なくされながらも続けられたが、その後交通事情の悪化や、隅田川の汚染が問題視され、1961年から1977年まで16年間休止された。しかし1978年に「隅田川花火大会」に名称を変えて復活し、以後現在まで毎年7月の最終土曜日に開催されている。
 江戸時代には1659年創業の鍵屋と、1808年に7代目鍵屋から暖簾分けした玉屋が互いに花火の腕を競い合い、大いに盛り上がったという。鍵屋と玉屋が交互に花火を打ち上げたので、江戸っ子たちはよかった方を「たまや〜」とか「かぎや〜」と呼びあげたそうだ。残念ながら玉屋は一代限りで断絶したため、掛け合いの楽しみは失われてしまった。
鍵屋は、「株式会社宗家花火鍵屋」として現存しており、余談だが15代目の天野安喜子さんは講道館柔道六段で福岡国際女子柔道選手権の銅メダリスト、北京オリンピック柔道審判員(女性初)、日本大学博士(芸術学)のスーパーウーマンである。
花火は見るだけではなく、打ち上げの音と火薬の匂いに酔いしれるというのが江戸っ子流である。通になると音だけで花火の大きさを当てたりしたという。
現代の花火大会はどうか。陽が沈むのが待ちきれない人たちが、道路にゴザを敷いて早々と陣取り、焼き鳥に缶ビールを片手に語り合いながら打ち上げ前のひとときをすごしたりする。花火が打ち上がる頃には、すっかりできあがってしまって、最初の数発を観るとそのあとは「ドーン」という音を聴くだけで、ただひたすら飲んでいたりする。観てよし、聴いてよし、飲んでよしである。ひとそれぞれ、老若男女、誰もが楽しめる。
死者の慰霊をきっかけとして始まった花火大会だが、江戸っ子の創意工夫は、当初はなかった楽しみを次々と生み出し、今も人々の心を和ませ続けている。
第37回隅田川花火大会  http://sumidagawa-hanabi.com/
東京都の花火大会 http://hanabi.walkerplus.com/list/ar0313/
全国の花火大会  http://hanabi.walkerplus.com/kaisai/
株式会社宗家花火鍵屋http://www.souke-kagiya.co.jp/
プリンタ出力用画面

前のページ
第十話「ほおずき市」
コンテンツのトップ 次のページ
最終話「江戸時代のこどもたち」