コラム(江戸魂千夜一話)

青山富有柿プロフィール
かわら版指南。趣味は読書と散歩。好きな食べ物はお蕎麦。
江戸東京下町文化研究会会員。

江戸魂千夜一話概説
 江戸時代の庶民生活には何かとてもいい雰囲気があったような気がしています。そこには生活のためのいろんな知恵がつまっていたのではないかと思います。時代の変遷を繰り返すうちに、そのよさがだんだんと失われつつあるとはよく言われることですが、探せばまだまだたくさんあると思っています。 
  このエッセイでは、江戸のよさを感じさせてくれるような、おもしろいエピソードをたくさん探し出してきて、簡潔にわかりやすく紹介していきたいと思っています。

►CONTENTS
第一話「寄席は健康にいい」
第二話「ボーイズバラエティ協会」
第三話「酉の市(とりのいち)」
第四話「江戸っ子気質(かたぎ)」
第五話 「野暮(やぼ)はだめ」
第六話「天ぬき」
第七話「負けずぎらい」
第八話「寄席で地震」
第九話「落語をやらない落語家」
第十話「ほおずき市」
第十一話「隅田川花火大会」
最終話「江戸時代のこどもたち」
第一話「寄席は健康にいい」

寄席に行くとほとんど毎回出てくるのが「笑うのは健康にいい」という話だ。まあそうなのだが、話を聞いている客席は、高齢者が多いこともあってか、けっこう眠っていたりする。これも健康にいいのだろうな、などと思って知り合いの江戸っ子にこの話をしたら、大真面目にそのとおりだと言われた。
落語どころか伝統芸能はすべて健康にいいそうだ。なぜならよく眠れるから。とりわけ健康にいいのは「能」だという。優れた「能」はリラクゼーション効果が高いため、脳波をベータ波からアルファー波に転ずる作用があり、このアルファー波が眠りを誘っているというわけだ。したがって眠いときはいい「能」なのだから堂々と眠っていいとこの江戸っ子はいう。何だか嘘くさい。本当にそうなのか。
どんなときに寄席で眠るのか考えてみた。
つまらなくて眠ってしまうケースが大半だが、中には面白いのに眠ってしまうこともあることに気づいた。いつも同じ落語家だ。面白いのだが最後まで聞いたことがない。この落語家の声色とか話しのリズムが心地よいのか、まるで子守唄を聞くようにして、いつの間にか寝入ってしまうのだ。
これはアルファー波のせいではないか。
もしそうであればこの落語家は心身ともにリラックスさせる力があることになる。落語を聞いてもらえないけれどリラックスはさせてくれるわけだ。落語家は悩むかもしれないが、健康にいいのは間違いない。
寄席には笑いあり、(ほろっとする人情噺で)涙あり、そしてアルファー波?睡眠もありだ。流行りのことばで言えば「笑活」「涙活」「眠活」のすべてがそろっている。寄席に行けば、心身ともにリフレッシュできる。
健康にいいのは間違いない。

都内寄席ガイド
 鈴本演芸場(上野)http://www.rakugo.or.jp/
 浅草演芸ホール(浅草)http://www.asakusaengei.com/
 新宿末廣亭(新宿三丁目)http://www.suehirotei.com/
 池袋演芸場(池袋)http://www.ike-en.com/

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第二話「ボーイズバラエティ協会」