「江戸ことば」



江戸ことば(江戸語)は、上方語と江戸方言が結びついたものといわれる。しかし,実際には武士・町人の身分差など複雑な様相をみせた。また、芝居や吉原などの言葉も特殊な発展をしてしる。
そのなかで、山手の武士の言葉は共通語としての性格を強め、明治以後の山手言葉となっていった。他方、町人のことばは江戸なまりとも称し、江戸下町の俗語として話芸や文芸にも表現された。
しかし、こちらは明治の近代化のなかで、否定されてしなった。以下に代表的な江戸ことばの例を掲げるので、雰囲気を味わってほしい。



あかすべい あかんべし。

あかめひっぱる(赤目引張る) 怒ってにらむ。やっきになる。

あさがらばば(麻殻婆) 死に損ないの婆

あめふりのにわっとり(雨降りの鶏) 首をかしげるさま。

ありんすこく(ありんす国〕吉原のこと。

いいわけこわけ(言い訳故訳) いろいろと言い訳をする。

いきちょん(意気ちょん) ちょっと意気な。

いこうずく(威光尽) 権威をかさにきる。

いごきなき(動き泣き) 不平たらたらで働く。

いじばる(意地張る) 意地を張る。

いたつき(板付) 獄門首になる。

いたのまかせぎ(板の間稼ぎ) 湯屋での盗み。

いたみぎんざんねずみとりかぷと(痛銀山鼠鳥甲) いたみいりました。

いたやのたまあられ(痛やの玉霰) 痛い

いなかものでござい(田舎者で御座い) 湯屋で湯に人るとき人をよけるあいさつ。

いもきゃく(芋客) 薩摩藩士の遊客。

いろめかす(色めかす) 派手な振る舞い。

うでいる(鶇で居る) 飲み込んでいる。

うざっこい{うざっ濃い) うじゃうじゃいる。

うちのし(内の衆) 自分の主人。

うっつく(美つく)美人。

うてんつう(うてん通) 半可通。通人ぶる人。

うわきまいり(浮気参り) 信心からではない物見遊山の参詣。

うんつく(連越) ぱか

えちぜん(越前) 包茎。福井藩主松平氏が槍の鞘に熊の毛皮を用いたことによる。

えどべえ(江戸兵衛) 上方の人が江戸者をばかにしていうことば。

おいねえ(負ひねえ) 手に負えない。

おうすうちゃん どんちゃん騒ぎ。

おおかぶり(大被) 大失敗。

おかしろい(可笑白い) おもしろおかしい。

おかずいれん(陸水練) 実際の役に立たぬ。

おかまのだんご(御釜の団子) 数が多いだけ。

おきゃあがんなせえ よしやがれ。

おきょうをよむ(お経を読む)決まり文句をいう。

おくにのまっがみえる(御国の松が見える) 経済的に一息つく。

おしまい(御仕舞) 髪を整える。化粧をする。

おしもにござれ(御下に御座れ) 座りなさい。

おしもん(押し物) おはこ。得意なこと。

おっこちきる ぞうこん惚れる。

おてちん(御手ちん) からっけつ。

おひゃる ひやかす。おだてる。

おまっり(御祭り) セックス。

おれこます(折れ込ます) 妊娠させる。

かきころぱす(書き転ばす) まんまとだます。

かげきよ(景清) 悪いやつ。

がたみつ(がた光) 竹光。侍をあざける語。

かなぐそをひる(金糞を放る) 金銭上の不始末をしでかす。

かみなりのやまい(雷の病) 着た切り雀。北鳴りのもじり。

きぶさい(気塞い)怪しい。疑わしい。

きよもりさん(清盛さん)熱くなっている。平清盛の熱病からのしゃれ。

きりあい(切合) 割りかん。

くちっばたき(口っ叩き) 口の達者な。

くったくらしい(屈託らしい). 心配そう。

くろっぽい(黒っほい) プロらしい

けいずけ(傾助) 傾城(女郎)好き

けしからねえ(怪しからない)  たいへんな。

けしきどる(気色取る) 気取る。

げじきにする(下直に為る)軽視する。

けじめをくう ないがしろにきれる。.

げすばる(下司張る) 下品。

けんつう(見通) 髪の毛が薄いこと。

けんびる(剣菱る) 剣菱の酒を飲む

ごいさりまし(御免さりまし) お許し下さい。

ごうぜえもん(郷在者) 田舎者。

ごぶもすかぬ(五分も透かぬ)  非の打ち所がない。

さがみおんな(相模女) 尻軽女。好色な女。

しいころばす(強転ばす) 酒を強要する。

しげる(繁る) 女男がむつまじくする。

しこる 夢中になる

しゃくりあげる たきつける。おだてあげる。

じゃうのじのしりをまげる(十の字の尻をまげる) 質に人れる。七の字にかける

しょうつれもない(生連も無い) 薄情だ。

しらみせ(白店) 娼家でないかたぎの商家。

しりにはさむ(尻に挟む) 問題にしない。

しりやけ(尻焼) あきっぽい質。

しりをくらう(尻を食らう) とぱっちりを食う。叱られる。責任をとらされる

しろいくび(白い首) 芸者。芸妓。

じんすけ(甚助) 助平。やきもちやき。

すけんつう(素見通) ひやかすだけの郭通。

すこびる 気どる。偉そうにする。

ずない(図無い) 大きい。横着な。偉い。

ずるでえ どだい。てんで。

すをかう(酢を買う) いらぬせっかいをする。

そが(曽我) 貧乏。曽我兄弟の貧しさから。

そそる ひやかして歩く。浮かれ騒ぐ。

そばずえがあたる(傍杖が中る) まきぞえにあう。とばっちりを食う。

だっちゃあない 〜といったらない。

たっぱい(答拝) 丁寧にもてなすこと。

たつみあがり(辰巳上) 声を甲高く荒げる。

だりむくる 泥酔する。潰れる。しくじる。

だんない(大事無い) 差.し支えがない。

ちくとんばい すこしばかり。

ちゃあふう  ぱあになること。やめにすること。

ちゃがらはがら どさくさ。混乱。

ちゃきちゃき 女郎にふられたこと。

ちょうらかす からかう。

ちょちょら  てまかせ。見え透いお世辞。

ちんちんかもかも 男女がいい仲であるさま。

つうくつ(通窟) 共謀する。情けを通じる。

つがもねえ 他愛もない。とんでもない。

つけがあらい(付が荒い)飲食や色ごとに{いじきたない。

つばめる 集める。まとめる。

でいでい 履物修理。呼び声からきた語。

ていらず(手入らず) きむすめ。処女。

でおんな(出女) 宿場女郎。飯盛女。

でたっこ(出たっこ) でたらめ。

てめがあがる(手目が上がる)  いかさまがばれる。詐欺が露見する。

とうがらしをくわせる(唐辛子を食わせる) 人をだます。

なだてがましい(名立てがましい) 有名らしい。評判になりそうだ。

なるくち(成る口) 飲める口。酒好き。

ににんぶち(二人扶持) 日に玄米1升、年にイトじ3石6斗の扶持米。

にゃける(若気る) 男のくせに女っほい。

ねじかかる(捻掛かる) 食ってかかる。

ねずみくいぞんぜず(鼠食存ぜず) 質屋の決まり掲示。質屋は鼠の害を保証しないので。

のいたなかでもねえ(退やた仲でもねえ)  五十歩百歩。ほとんど同じ。

のしゃばりでる(伸張出る) 無遠慮横柄にしゃしゃり出る。

はたきぬく(叩き抜く)  さんざんにしくじる。

はらがきた(腹が来た)  腹が減った。

はんしょうどろぼう(半鐘泥棒) のっぽ。

ひぞる(干反る) むくれる

ひだるい ひもじい

ひってん 文無し。貧乏。

ひとちゃくる ちょろまかす。だまし取る。

ひゃくなり(百成) 口うるさい。

ひょうたくれ ばか。無粋者。

びりつく 女にでれでれする。

へしと どっさり。しばしば。

ぼいだす 追い出す。

ぼっとりしんぞう(ぼっとり新造) グラマーな娘。

ぼてくろしい いやらしい。色狂い。

ほめきざかり(熱盛) 思春期。色気盛り。

むぜっかい 無理。強引。

むぜつげない(無是つ気ない)  無慈悲な。

むっくに まるで。まったく。

もがり(虎落) ゆすり。たかり。

ゆげがあがる(湯気が上がる) 出世する。

よこにねる(横に寝る) 借金などを返さない。

よたろう(与太郎) でたらめ。嘘つき。

よぼける 老いぼれる。

りょうけんする(了簡する) 堪忍する。

ろくだんめ(六段目)  おしまい。これっきり。

わるあし(悪足) たちの悪い情夫。悪い虫。


増補版「江戸東京年表」小学館/転載  参考文献/『江戸語大辞典』、『東京語のゆくえ』