最終話「江戸時代のこどもたち」

最終話「江戸時代のこどもたち」

江戸時代の日本人はこどもをかわいがった。
江戸後期から明治初期に来日した外国人が、日本人がこどもをかわいがる様子をたくさん記録に残している。以下はそのほんの一部である。

「私は、これほど自分の子供をかわいがる人々を見たことがない。子供を抱いたり、背負ったり、歩くときには手に取り、子供の遊戯をじっと見ていたり、参加したり、いつも新しい玩具をくれてやり、遠足や祭りに連れていき、子供がいないといつもつまらなそうである」   旅行家 イザベラ・バード

「江戸の街頭や店内で、はだかのキューピットが、これまたはだかに近い頑丈そうな父親の腕に抱かれているのを見かけるが、これはごくありふれた光景である。父親はこの小さな荷物を抱いて見るからになれた手つきでやさしく器用にあやしながら、あちこちを歩き回る」。   イギリス公使 オールコック 

「一般に親たちはその幼児を非常に愛撫し、その愛情は身分の高下を問わず、どの家庭生活にもみなぎっている」。 オランダ海軍の軍人 カッテンディーケ

「世界中で日本ほど、子供が親切に取り扱われ、そして子供のために深い注意が払われる国はない」「彼らは母親か、より大きな子供の背中にくくりつけられて、とても愉快に乗り廻し、新鮮な空気を吸い、そして行われつつあるもののすべてを見物する。日本人は確かに児童問題を解決している。日本人の子供ほど,行儀がよくて親切な子供はいない。また、日本人の母親ほど、辛抱強く、愛情に富み、子供につくす母親はいない」。 アメリカの動物学者 エドワード・モース

このように日本人が子どもをかわいがる様子を、外国人たちは驚きと感動をもって眺めていた。日本人はどう思っていたのだろうか。国学者の橘守部(たちばな・もりべ)は次のように言っている。

「その子の幼い時から、朝晩、側近くに親しく寄せて、おかしくもない子どもの話も、面白そうな様子で聞き、年齢相応のことを話して聞かせ、楽しみも共にし、打ち解けた遊びも共にするようにして、大きくなってからも、ひたすら親しみ睦まじくすることを、親の方から習わせるように。そのようにすれば、悪いことがあった時に叱っても、たまのことだから、快く聞き入れるだろう」。

理屈抜きにこどもをいつくしみ、かわいがるやさしさ。これも江戸魂である。  終

参考文献 逝きし世の面影 渡辺京二著 平凡社ライブラリー
江戸という幻景 渡辺京二著 弦書房




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